Marquise de Merteuil et Cecil de Volanges。

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薔薇が数百年の長きにわたって人々に愛培される理由は、
花の美しさは勿論、匂いの素晴らしさに加えて、
独特である名前の付け方があると思います。
それと言うのも、他の植物と比べて、
人の名前が付いている種類が非常に多いのです。
薔薇は愛する人、尊敬する先人にその名前を捧げられてきました。
花の美しさ、匂い、そして名前……この3つの要素が一つになって、
薔薇の魅力をさらに素敵なものにしているのです。

昨秋、薔薇園にて偶然にも木村卓功さん作出の、
可憐な薔薇のブーケを見る機会がありました。
周りの皆が驚く程の愛らしさ。早速、木村さんに問い合わせると、
まだ発売の予定どころか名前すらないとのこと。
ブログでその素晴らしさを書かせて貰うと読者の皆さんから沢山の反響がありました。
そんなこんなしている内に、木村さんから名前を付けて貰えないだろうかと打診があったのです。
人様が作った大事な薔薇に名前を付けるなんて
大それたことは考えたこともなかったのですが……。

僕は常々、薔薇にはなるべく人の名前を付けたいと思っています。
それが俳優などの実在の人物であろうと、
小説や映画の主人公のように架空の名前であろうと、
その薔薇に合った魅力的な名前を付けたいのです。
常に幾つか候補は持っています。
今年の僕の薔薇にはある悪女の名前を付けようと思っていました。
そう、薔薇は美しく可憐なだけではなく、
どこか猛々しくしたたかな部分も持ち合わせているのです。
例えば、花は言葉にならないほど美しいのに鋭い刺を持っていたりします。
綻びかけた蕾の愛らしさと反対に、朽ちる寸前の壮絶な美しさ……。
美醜は表裏一体、その二面性ゆえ美しさが冴え渡ると思うのです。
名付け親をお引き受けする前、突如、僕の頭にあるアイデアが閃めきました。
きっと木村さんにも喜んで貰えるアイデア。
それは、ある小説の中の登場人物から木村さんと僕の薔薇の名前を取ることだったのです。
僕は個人育種家でコマツガーデンに全面的に面倒を見て貰っているアマチュア。
木村さんは薔薇の専門家でオリジナルの薔薇は
自らの店で生産、販売をしているプロフェッショナル、
それぞれに違う環境の2人の薔薇の名前を同じ小説から取る……。
何やら凄く素晴らしい考えのように思えたのです。
今までの枠や垣根を超えた何か、
薔薇をもっと大きな括りで物語れるかもしれない、そう思ったのです。

その小説とは、今から200年ほど前のフランス。
貴族社会華やかかりし頃に生まれた書簡小説の傑作、
ラクロの「危険な関係」です。主人公は美貌と財を持ち合わせた社交界の華。
その美徳をもってして世間の尊敬を一身に集める麗しいメルトイユ侯爵夫人。
しかし、裏では愛人を何人も持ち、自らの欲望のためには策を弄し、
人をまるでゲームの駒のようにいとも簡単に操っていたのです。
侯爵夫人は自分を裏切り若い娘と結婚するという愛人に激怒、
元愛人のヴァルモン子爵にその結婚相手の美しい娘、
セシル・ドゥ・ヴォーランジェを誘惑するように持ちかける……。
二人のそれぞれの思惑とエゴ、不幸な偶然が重なり事態は思わぬ方向に一人歩きして行く……。
僕の薔薇を社交界の悪の華、マルキーズ・ドゥ・メルトイユ(メルトイユ公爵夫人)、
木村さんの薔薇を可憐で無垢な娘、セシル・ドゥ・ヴォーランジェと命名しました。

マルキーズ・ドゥ・メルトイユは濃いピンク色の花が、
まるで侯爵夫人の頬を撫でるパフのように艶めかしい薔薇、
貴婦人が身に纏う香水のように濃厚な匂いがします。
一方のセシル・ドゥ・ヴォーランジェは若さに溢れ、
ほんの一刷毛、紅を差したような可憐さ、
思わず頬を寄せたくなる清々しい洗いたてのリネンの匂いがします。
魅力的な「危険な関係」は時代を越え、国と形を変え数々の映画や舞台になっています。
是非、物語の結末はご自分の目で確かめてみてください。

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この長ぁ〜い長ぁ〜い文章、3月16日発売の「My GARDEN」のために書いたものです。
依頼された文字数を大幅に超え(軽く倍!)自分ではどうにもならなくなって(笑)
編集長の安藤さんに丸投げしたもの。僕って、文章を削るの下手なんです。
ダァ〜ッと書いて、赤を入れているともっと長くなっちゃう(笑)
書く方もお喋り?きっと説明好きなのね。
だって、もっと皆さんに正確に知って貰いたいじゃない?

出来上がった「My GARDEN」……プロフェッショナルの手でバッサリ。
余分な装飾や、迂遠な言い回しをスッパリ(笑)
一刀両断に赤字を入れて戴きました。ははぁ〜畏れ入谷の鬼子母神(笑)
是非、お手元にある「My GARDEN」の文章とこれを読み比べてみて下さい。
アマチュアの書くトイレットペーパーのようにダラダラと長い文章と、
プロフェッショナルの厳しい目の違いがハッキリ分かります。

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2枚目の写真は「Marquise de Merteuil」のファースト・ブロッサム。
2002年、秋に種を蒔いて翌5月に初めて咲いた花を撮りました。
この世の中に薔薇の品種は数あれど、
その薔薇が初めて花開いた1枚を目にする機会は殆ど無いハズ。
皆さぁ〜ん!貴重な1枚を目にしているのですぞぉ(笑)
花は小さいながら、後々の艶やかな姿を彷彿とさせる1枚です。


28. 04. 2011


Benoit。


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by souslarose | 2011-04-28 21:34 | Under the Rose

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