New Roses SPECIAL EDITION for 2011。

b0168859_8443473.jpg
××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××

視覚、嗅覚、聴覚、味覚、触覚……。
人の五感の中で嗅覚が一番、記憶と密接に繋がっていると思います。
それぞれの感覚も、勿論、埋もれた記憶を喚起し、
僕達を過去に誘ってくれますが、何と言っても嗅覚が、
一番、鮮明に、かつ、広がりを持った記憶の世界に僕達を連れて行ってくれます。

僕は小さい頃から映画が好きで、良く時間を見付けては、
早い時期から映画館の暗闇に身を沈めていました。
スクリーンに映し出される映写機のまばゆい光。
カタカタカタカタ……映写機がまわる音、一筋の光を遮る、
客席から立ちのぼる紫煙の行方(当時は場内で喫煙可能だった!)
都内の高級ロードショウ館、地方の場末の劇場、それぞれの匂い。

映画……それは僕の人生の教科書。
暗闇に身を沈め、幕が上がると一気に僕を未知の世界に連れて行ってくれます。


 冬のニューヨーク。マンホールからもうもうと立ちのぼる蒸気の生暖かい匂い。
 ドライバーは少女を救うために立ち上がります。

 蠟燭の灯りとカード遊びに興じる貴族たちの幾重にも塗り込めた白粉のすえた匂い。
 決闘と女遊びの繰り返し……一人の男の放蕩の人生の末路は……。

 広大な向日葵畑。哀しみに表情をなくした女の頬をウクライナの風が優しくなでる。
 暖かな夕餉の匂い、乳飲み子の匂い、対照的な工場地帯の鉄の匂い……。

 人目を忍ぶ逢瀬は潮と汗の匂いがする。
 日傘を波打ち際から崖の上まで飛ばすアイルランドの風。

 ロック歌手の専用機の中に充満する煙草とドラッグ、バーボンの匂い。
 破滅に向かって絶唱する悲しい女の満たされない人生。


優れた映画は視覚や聴覚だけで訴えるのではなく、
あるハズのない嗅覚で僕等をさらなる未知の世界に連れて行ってくれます。
映画の匂いにまつわる数々の想い出……。
b0168859_845737.jpg
××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××

薔薇ファン待望の「New Roses Special Edition for 2011」が発売になりました。
編集長の玉置一裕さんが、ご親切に今回も、丸々1ページ、
僕の薔薇のために割いて下さいました。テーマは「香り」……。

 「お好きな映画をモチーフに如何ですか?」

お言葉に甘えて、それぞれに匂いのいい、
「Under the Rose Series」4品種の中から「Bella Donna」を選び、
僕なりに書いてみたものが巻頭特集の4つのエピソードの中に掲載されています。

匂いと映画……何だか捉えどころが内容で苦労しましたが、
「自由にページを作って下さい。」と言う玉置さんのお言葉に甘えて、
僕の中で印象深い映画3つを選び、それぞれの主人公の年代に合わせて、
「Bella Donna」の蕾から散る間際までの3枚の写真と、
それぞれの主人公へのオマージュ……のような文章を添え、
花が咲き進むさまを女性の人生になぞらえて……。
デザイナーの家常善光さんに丸投げいたしました(笑)


 南部の大地を駆け抜ける生き生きとしたスカーレット……。

 まさに大輪の薔薇が咲き誇っているような哀しみのソフィー……。

 夢か現か……老いへの恐怖と過去への郷愁に身を委ねるブランチ……。


 「どんな感じにしましょうか?何か希望はありますか?」
 「ン?兎に角、一番素敵なページにして下さいね。」

そして出来上がったのが、巻頭の9ページ目になります。
僕の勝手でいい加減なリクエスト(しかも要求は高い・笑)にめげず、
押しつけ、責任逃れの言いたい放題にも関わらず、
素晴らしいページに纏めて下さった彼の才能に脱帽です。
昨今のグラフィック・デザイナーの仕事は多岐にわたります。
昔は写真や文章をレイアウトするのが主でしたが、
最近は可成りの分野に渡っての知識とテクニックが求められます。
今回の「New Roses Special Edition for 2011」の中で、
家常さんが一番、楽しくかつ自由に創造出来たのが僕のページなのではないか……。
我が儘で勝手な僕はそんな風に思っています(笑)

早速、手に取られて読まれた方も多いと思います。
薔薇の匂いに関してこれほど詳しく、また、読み物として、
専門書としても充実した本が今まであったでしょうか。
これで薔薇の楽しみ方が一層、深いものになりましたね。
秋の夜長、是非、手元に置いてジックリ読んでみたいものです。
b0168859_8454032.jpg
××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××××

「Bella Donna」…………。

小さな硬い蕾が花開きはじめた直後は典型的な高芯剣弁なのですが、
満開から散り際に向かって雄大な様相を呈します。この薔薇が一番美しいのは、
ラベンダーに退色して花弁に艶がなくなって来るその最後の瞬間……。
スパイシーなブルーの匂いに蜂蜜とレモンの匂いが混ざります。


08. 10. 2010


Benoit。


★Copyright © 2009~2010 souslarose, All Rights Reserved.
[PR]
by souslarose | 2010-10-08 00:00 | Under the Rose

Let's talk about roses。


by ブノワ。
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30